ただの梅農家がYAMAP認定「インタープリター」になるまでの泥臭い挑戦の記録

こんにちは。和歌山県田辺市の梅農家、農家のやまさきです。

といっても今回は「農家のやまさき」としてではなく、私個人の活動のご報告です。 話をまとめるのが不得意なので、今回は時系列順に、その時感じたリアルな感情をそのまま書いていこうと思います。少し長くなりますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


インタープリターって何だ? 〜受講のきっかけ〜

2025年の5月頃。毎月回ってくる回覧板に入っていた田辺市の広報誌に、「インタープリター養成講座開催」との文字がありました。

「インタープリターって何だ?」 そう思いながら下の説明欄を読むと、このように書かれていました。

「インタープリターとは、自然の大切さや素晴らしさを参加者に伝える人を意味します。ガイドのように地域に生息する植物や野生動物に詳しいというだけではなく、地域の文化や歴史、さらにはそれらの背後に潜む意味や関係性にいたるまで精通しており、参加者の興味を引きつけるエンターテイナー。子ども達に分かりやすく説明でき、ツアープログラムを演出する力も求められます。」

私自身の想いと、ある少年のエピソード

私は以前から、梅を通じて「食育」や「農家という仕事」に興味を持ってもらいたいという想いがありました。若手農家の集まりである4Hクラブでも活動していましたが、活動内容に限界も感じており、「どうにか出来ないかなぁ」と漠然と考えていました。

そんな時、近所に都会から小学生の男の子が転校してきました。 多感な時期の複雑な事情もあり、不登校で家でゲームばかりしている彼を見て、「せっかく自然豊かな田辺市に来たのだから、外遊びや山で遊んで欲しいな」と思い、カブトムシ捕りに誘ってみたんです。

一緒にバナナトラップを作り、どの木にカブトムシが寄ってきやすいか調べ、実際に仕掛けて捕獲する。 私自身にとっても印象的な夏の思い出になりましたが、何よりその男の子が目を輝かせ、一緒に山に入って色々な質問をしてくれたことを、今でも鮮明に覚えています。

この原体験が、私の背中を押してくれました。

完全アウェーからのスタート 〜説明会での衝撃〜

2025年6月20日、tanabe en+(タナベエンプラス)での説明会。梅の収穫で一番忙しい時期でしたが、なんとか時間を作って出席ました。

会場に着くと、ラフな格好をした髭もじゃのおじさんが(笑)。 その方こそ、今回の講座の発起人であり、登山アプリ「YAMAP」の名物ガイド「ひげ隊長」こと前田央輝さんでした。

周囲は先輩インタープリターやその紹介で来ている参加者たちが挨拶を交わす中、回覧板を見て恐る恐るやってきた自分は「完全アウェーだなぁ…」と縮こまっていました。

説明会では、インタープリターと自然ガイドの違いなどを伺いましたが、中でも一番衝撃的だったのが、ひげ隊長のこの言葉です。

「まぁこの中から合格するのは2~3人かなぁ?結構厳しいからね?」

えっ、受講したらみんなインタープリターになれるものじゃないの!?というのが本心でした。 10数名の参加者の中から選ばれないといけないのか……と、その時は強い競争心やライバル心が芽生えていました。

コラム:田辺市で活躍するインタープリターの仕事って?

現在、田辺市では小学5年生を対象に森林自然学習を行っています。山や磯への校外学習で、自然や地域の歴史を教えるのがメインの仕事です。キッズキャンプや自然紹介ツアーなども増やしていく予定です。 (ちなみに私は和歌山市育ちですが、小学5年生の時に加太で自然学習をしたのを覚えています。皆さんの地域でも、似たような体験学習はありましたか?)

ライバルから仲間へ 〜第1回養成講座〜

2025年9月。いよいよ第1回講座がスタートしました。結局参加したのは私を含め10名。

音のアーティスト、環境省で働く自然博士、ヨガの先生、アドベンチャーワールドの方、ボーイスカウトの隊長、都会から移住してきた超陽キャなお母さん、木が大好きな林業女子、海の生き物を研究する天才高専生、ツリーイングのガイドさん。 ……そして、ただの梅農家の私。本当に個性豊かなメンバーです。

先輩インタープリターとして参加してくれたのが、海も山も歴史も熟知するスペシャリストの「山ちゃん」と、遊びの天才で一番子供目線になれる「てっちゃん」

ひき岩群自然公園を歩く模擬ツアー体験で、てっちゃんが得意なアイスブレイクを体験しました。 最初はライバル心むき出しだった私ですが、童心に帰ってバカみたいなことをし、山頂で叫んでいるうちに、気づけば「このメンバー全員で一緒に合格したい」という仲間に変わっていました。

天神崎での山ちゃんの模擬ツアーでは、圧倒的な知識とツアー構成の凄まじさを体感。「自分の好きなことや経験を存分に発揮し、参加者が自主的に楽しめるツアーを組む」のがインタープリターなのだと痛感しました。

試練の始まり 〜自分だけの模擬ツアー作り〜

ここからが本当の試練です。「自分には何が出来るか?何を伝えたいか?」を自問自答する日々が続きました。

私は海の生態には詳しくありません。そこで、ひき岩群の山エリアを使い、世界農業遺産である「梅システム」を紹介しつつ、道中で見つけたカエデの種を飛ばすアクティビティを織り交ぜたツアーを考えました。

普段は一人で農作業をしていて誰とも話さず帰ることも多く、話すのは下手くそだし、人前に立つと緊張する。ガイドとしては失格レベルだったと思います。 でも、「子供たちに一次産業に関わってほしい。そのために、まずは外で体を動かし汗を流す楽しさを知ってほしい」という熱い気持ちだけで、必死にツアーを組み立てました。

届かない「80点」 〜模擬ツアー試験と葛藤〜

11月の1回目の試験。まさかのトップバッターでした。
資料を持つ手はブルブル震え、なんとか終えたものの、結果は70〜75点(80点で合格)。「メリハリがない、難しい言葉が多い」と的確な指摘を受けました。

2月の2回目の試験。 前回の反省を活かし、現物を用意してイメージしやすくブラッシュアップ。梅システムと自然環境の大切さをしっかり伝えられた手ごたえがありました。先輩方からも好評をいただき、嬉しい言葉をもらえました。

しかし……肝心のひげ隊長とてっちゃんの採点は75〜78点。合格ラインの80点を超えることが出来なかったのです。

「緊張しすぎ、精度の向上が必要、メインイベントがない」「前回の方がワクワクした」という評価。 今なら理解できるのですが、当時は先輩からの好評もあった分、80点を超えられなかったことに納得できない自分と、未熟さを理解している自分とで、ずっと心の中にモヤモヤが渦巻いていました。

一応その場で「合格」となり、インタープリターの認定は頂けたのですが……。

泥だらけの再挑戦 〜志願の追試〜

合格したのに、腑に落ちない。モヤモヤした感情を抱えたまま参加した打ち上げ。 ひげ隊長や先輩たちと話すうちに、「もっとこうすれば違うツアーが作れるのでは?」というアイデアが浮かんできました。

「合格はしたけれど、3月の追試にチャレンジさせてほしい」

私はその場で志願しました。 もし良い結果が出ず合格取り消しになっても構わない。万人受けしなくてもいいから、もう一度自分の想いをぶつけたいと決断しました。

スケジュールの都合で、急遽エリアがひき岩群から「天神崎」に変更になるという試練もありました。しかし「現場を選べないのもインタープリターの試練」と快諾。

天神崎の多様な土環境を見て思いついたのは、「いろんな土から泥団子を作り、農業に欠かせない『土』がどうできているかを伝えるツアー」です。

手が泥だらけになって、万人受けはしないかもしれない。でも、農業の楽しさや土の大切さが、たった一人にでも刺さってくれたらそれでいい!という振り切った気持ちで挑みました。

最後に

まだまだ知識不足で口下手で、ガイドとしてのテクニックもありません。 しかし、山ちゃんという心から尊敬し、目指すべき素晴らしいインタープリターの先輩に出会うことができました。

令和8年度からは、実際に田辺市の小学5年生たちと一緒に森林学習へ行くことになります。 子供たちが楽しく学べて、安全で、一生の思い出になるような体験を届けられるよう、泥臭く頑張っていきたいと思います!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました