はじめに
当農園「農家のやまさき」では、紀州南高梅の青梅を販売していますが、
よくいただく質問に 「農薬は使用していますか?無農薬ではないのですか?」 というものがあります。
結論として、当農園は 推奨されている基準値内で農薬を使用する慣行栽培 を行っています。
また、今後も無農薬栽培を行う予定はほぼありません。
この記事では、その理由をできるだけ分かりやすくご説明します。
どうかご理解いただけますと幸いです。
慣行栽培(かんこうさいばい)とは?
記事の冒頭で慣行栽培と記載しましたが、
これは 国や県が定めた基準に沿って、農薬や肥料を適切に使う一般的な栽培方法 を指します。
「普通の作り方」「一般的な農法」と捉えていただいて問題ありません。
無農薬栽培についての誤解
まず前提として、現在は農産物に 「無農薬栽培」 と表示して販売することはできません。
農林水産省の『特別栽培農産物に係るガイドライン』では、
- 無農薬栽培農産物
- 無化学肥料栽培農産物
- 減農薬栽培農産物
- 減化学肥料栽培農産物
などの表記を禁止しています。
化学肥料や農薬の使用を減らしている場合は、
「特別栽培」や「有機栽培(オーガニック)」 として表示されます。
この記事では、
「有機=良い」「慣行=悪い」
というような価値判断は避け、仕組みだけを説明します。
野菜栽培と果樹栽培の大きな違い
無農薬や減農薬の農産物が健康志向のお客様のニーズに合うことは理解していますし、
私自身もできるなら挑戦したい気持ちはあります。
しかし、野菜と果樹ではまったく事情が違います。
● 野菜の場合
- 畑の一部だけ農薬を減らして試すことが可能
- 失敗しても翌年リセットできる
- サイクルが短く試験がしやすい
● 果樹(南高梅)の場合
- 一本の木で 20〜30年 梅を収穫し続ける
- 年単位の試験が難しい
- 失敗すると 木が枯れるリスク がある
- 植え替えると収穫できるまで 10年近く必要
- 抜根・伐採は重機を使い、業者に数十万円の費用がかかる
つまり、果樹農家は「今年は試しに無農薬で」という軽い判断ができないのです。
無農薬にした南高梅がどうなるか(実際の結果)
2025年、和歌山県南部では大規模な雹害が発生し、南高梅も甚大な被害を受けました。
その年、規格外が確定した木を使い、あえて農薬をかけなかった場合どうなるか を試しました。
その結果がこちらです。
- 表面が荒れ、黒斑が多数
- ひどいものは実がひび割れ
- 梅酒・梅シロップにすら使えないレベル
- 出荷は不可能
- 廃棄せざるを得ない
雹被害や風による傷のある規格外品は、
梅酒や梅シロップとして漬けてしまえば味は変わらないため問題ありませんが、
今回の無農薬試験の梅は、さすがに出荷も利用も難しい品質 でした。
無農薬と聞くと価値が高いように感じるかもしれませんが、
この状態ではお客様の満足につながらないどころか、
木の寿命の観点からも現実的ではありません。
まとめ:なぜ当農園は慣行栽培を続けるのか
理由は大きく3つです。
- お客様に安心して梅酒・梅シロップ作りを楽しんでいただくため
- 南高梅の木を健康に長生きさせるため(寿命を守るため)
- 果樹では無農薬の試験や失敗のリスクが極めて大きいため
私たち農家は、
安全性を守りつつ、美味しくて綺麗な梅を安定供給するために、
基準値内で必要最小限の農薬を使用しています。
今後も責任を持って南高梅を育て、
皆さまの梅仕事の時間が楽しくなるような梅をお届けできるよう努めてまいります。
農家のやまさきでは4月頃から南高梅の青梅を予約受付開始しますのでチェックしてください。
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